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t.A.T.u.「200KM/H IN THE WORNG LANE」
英語盤・ロシア語盤比較



 ノット・ゴナ・ゲット・アス/ナス・ニェ・ダゴーニャット

◇ 客観的な比較

・両者のアレンジに大きな違いはない。英語盤の方が若干音が厚めな程度。
・歌い終わってリズムだけになる後奏部分は、英語盤はロシア語盤の半分の長さにカットしてある。

◇ 個人的な感想

・ロシア語盤の最後の部分は長すぎる気がする。英語盤くらいでちょうどいい。
・ロシア語の「ゴニャーー!」という語感はインパクト大。
・英語盤は歌がどことなく一本調子な気がする。ロシア語の方がしなやかな感じ。

◇ 結論

・アレンジの基本方針に大差がないので、どちらも同じように楽しめるけど、やっぱり「ゴニャーー!」のインパクトは大。



 オール・ザ・シングス・シー・セッド/ヤー・サシュラー・ス・ウマー

◇ 客観的な比較

・英語盤=派手、ロシア語盤=地味。
・アレンジがかなり違う。英語盤は伴奏にいろんな音が詰め込まれているし、ロシア語盤にはないタンバリンが効果的に使われていてサウンドが華やか。
・ロシア語盤は中盤まではサビの伴奏が、ほぼリズムとベースだけになっていて、声だけが浮いた感じ。中盤以降はせわしなく上下するシンセ音が加わる。英語盤にはこの音はない。
・ロシア語盤はところどころボンゴがポンポコ鳴ってる。英語盤はデジタルサウンドの打ち込みのみ。
・ロシア語盤はサビが語尾上げ歌唱だけど、英語盤では普通に歌ってる。

◇ 個人的な感想

・これもロシア語のほうが感情がこもってる感じ。英語はやっぱり一本調子に聞こえる。
・“All the things she said”を早口で一気に詰め込む英語詞を考えた人はエライ。
・どことなく情けない歌い方、語尾上げ歌唱、伴奏を控えめにして声が浮遊しているようなアレンジ、中盤以降に出てくるせわしないシンセの音などがミックスされて、ロシア語盤のほうが、禁断の恋に狂った女の子の不安定な気持ちや暗さがよく出ていると思う。

◇ 結論

・英語盤に入ってる「ロシア語バージョン」は、英語盤のアレンジにロシア語を乗せただけなので、オリジナルとは雰囲気が全然違う。英語盤のように攻撃的じゃない、もっと曲線的なこの曲の本当の姿が知りたいなら、ロシア盤を聴くべき。



 ショウ・ミー・ラヴ/ヤー・トヴァヤー・ニェ・ピェールヴァヤ

◇ 客観的な比較

・英語盤の冒頭には、ロシア語盤にはない電話の呼び出し音が入っている。
・英語盤の電話は「プツッ」と切れるけど、ロシア語盤は「プツッ、ピッ」という電子音が入っている(携帯電話か親子電話の子機を切った感じ?)。
・ロシア語盤は最後にもう一回、冒頭の電話のやりとり(の冒頭部分)がくり返されるけど、英語盤にはそれがない。
・ロシア語盤のアレンジは、リズムとベースに刻みのシンセが入ってる程度。全体に渇いた感じで、伴奏と歌の間にはスカスカの空間がある。英語盤はリズムとペースに加えて、ロシア語盤にはないカラフルなシンセ音が重なっていて、伴奏と歌のすきまを埋めている。
・ロシア語盤はサビの部分で、わざと不安定な音のコーラスをぶつけている個所がある(「パカジー、パカジー ムニェー リュボーフィ」の「リュ」のところ)。英語盤にはそれはない。
・ロシア語盤は終盤の部分で「パ〜ァカジー」と音を揺らして歌ってる部分がある。英語盤にはそれはない。

◇ 個人的な感想

・英語盤のサビは「ショミラーショミラーショミラー」とレーザービームのように連続してたたみかけてくる迫力がある。ロシア語盤は「パカジッ、パカジッ、パカジッ」と一発一発、砲弾が飛んでくるような感じ。
・英語盤はとことんまで明快さを求めた、サウンド重視の方針。しかしその結果、オリジナルのこの曲の重要な要素と思われる(恐らく意図して作られた)不透明さや不安定な雰囲気が、見事なまでにバッサリ削られてしまっている。

◇ 結論

・純粋にサウンドを体で感じたい人は英語盤。t.A.T.u.により意味を求めたい人はロシア語盤。



 30ミニッツ/トリッツァチ・ミヌート


◇ 客観的な比較

・ロシア語盤はイントロと間奏で、2人の笑い声にかぶってロシア語で会話しているのが聞こえる。英語盤は笑い声だけ。
・英語盤の方がイントロのピアノの音が鋭くて、ちょっと耳に痛い。
・アレンジはほぼ同じ。英語盤の方がほんの少し整っている気がする程度。

◇ 個人的な感想

・ロシア語盤は歌いだす前に息を吸うとき、かなり意識的に「ハァッ」と音をたてて吸っている。語尾も「ポルチサーハァ」みたいに、ため息のように終わる感じを多用。英語盤も多少意識してるようだけど、詰まった音で終わる単語が多いせいもあって、ロシア語盤ほど重要視されてない感じ。

◇ 結論

・基本的にはどちらも同じだけど、ロシア語盤には英語盤のプラスアルファとして、ため息に満ちたウェットな雰囲気がある。



 クラウンズ(キャン・ユー・シー・ミー・ナウ?)/クローウヌィ


◇ 客観的な比較

・アレンジの骨格は同じだけど、英語盤のほうはシンセがかなり厚目に補充されている。
・全体の大きなの流れも同じだけど、英語盤は途中にコラージュされたメロディが入ってきたりして、部分的に構成が違う。
・英語盤は最初から最後まで、かなり分厚く声を重ねてハモっている。ロシア語盤はほとんどハモっていない。

◇ 個人的な感想

・ロシア語の語感に合わせて「Can You see me now?」という詞を思いついた人はエライ。
・ロシア語盤での、喉の奥から絞り出されたような叫びと澄んだ裏声との対比の鮮やかさは、英語盤とは比較にならないくらい素晴らしい。
・ロシア語盤を聴いたあとでは、英語盤のリフ(“Can you see me now?”)に加えられたハモりは違和感がある。英語盤は全体的にハモりもシンセもちょっと凝り過ぎで、アレンジの洗練さと引き換えに、声そのものの持つ魅力が半減されている感じがする。
・英語盤はアレンジの変化によって全体のメリハリをつけている。ロシア語盤は2人の声の対比と歌い方によってメリハリをつけている。

◇ 結論

・ロシア語盤の方が、2人の声の魅力と真価をよりストレートに楽しむことができる。この曲は日本盤のロシア語盤には入っていないので、直輸入のロシア盤を買うべし。



 マルチック・ゲイ/マーリチク・ゲイ


◇ 客観的な比較

・英語盤は伴奏をほとんど全部作り直している。テンポは同じだけどイントロから違うし曲のサイズも違うし、2人のハーモニーが違う部分もある。メロディだけは同じだけどほとんど別の曲のよう。
・英語盤はギターの鋭いカッティング中心のアレンジ。ロシア語盤はイントロから鳴ってるピコピコ音中心。
・ロシア語盤はサビで毎回ピー音(放送禁止用語)が入る。英語盤は全くない。英語盤も、ボコーダーで変調してある部分はロシア語がそのまま使われてるけど、そこのピー音も外されている。
・ロシア語盤は声を軽く回したり残響をかけたりと、色々なエフェクトがかけてある。

◇ 個人的な感想

・英語盤のギター中心のアレンジはかなりカッコよく、スピード感もあって体がうずく。
・ロシア語盤はあくまで歌(歌詞)を立たせるためのアレンジという気がするけど、英語盤はヴォーカルまでもがアレンジの一部として組み込まれている印象。とにかく、いかにカッコよく聞かせるかを最優先してるような感じで、結果として詞のインパクトがサウンドのインパクトに負けていると思う。
・10代の少女が放送禁止用語を連発して叫び続けるという、およそ尋常とは思えない狂気がこの曲の大きな魅力のひとつだと思うけど、英語盤ではそれらの要素はバッサリ削られ、サウンドとノリのよさが最大の魅力になっている。

◇ 結論

・英語盤は詞の内容に対して、サウンドが健全すぎる気がする。ロシア語盤での、見えない壁に向かって全力でぶつかっているかのような、切羽詰まった感情表現が断然素晴らしい。



 スターズ/ザチェム・ヤー


◇ 客観的な比較

・ロシア語盤の方には、全編に渡ってきつめのエコーがかかっている。ラップ部分はエコーというよりも、コンマ数秒遅れで同時にラップしてる感じ。英語盤での処理はかなり控えめになっている。
・ロシア語盤には最初のラップのラストにピー音が入るけど、英語盤では入っていない。
・他の曲はおおむね英語盤の方が厚めのアレンジになっているけど、この曲だけは英語盤の方がロシア語盤よりも控えめですっきりしたアレンジになっている。
・英語バージョンの日本盤には、ロシア語のラップ部分の翻訳がついてない。

◇ 個人的な感想

・英語盤の歌い方は、少し平坦に聞こえる気がする。
・ロシア語盤のラップ部分は、2つの声が重なってて少しうっとうしい。
・ロシア語盤では、ラップの最後「この電話番号は解約されました」の直後に、主人公の打ちのめされた感情を表わすかのように、バスドラムとシンバルがバシーンと入る。ある意味この曲のクライマックスだと思うけど、英語盤ではそれがなくなって静かにシンセの持続音が入るだけになっている。

◇ 結論

・英語盤はなんとなく、ラップ部分の意味をあまり考慮してないんじゃないかという気がする。ロシア語盤は当然、ラップ部分の絶望的な暗さが全体の雰囲気を支配している。最後のシンバルの一発があるなしの差は、聴覚上の違い以上に大きいと思う。考え過ぎなのかもしれないけど。



 ロシア語盤未収録曲

<ハウ・スーン・イズ・ナウ?>

◇ 個人的な感想

・原曲を知らないけど、t.A.T.u.の歌うこの曲は単純にカッコいい。
・この曲が街で流れているのを初めて聞いたとき、t.A.T.u.が歌っているとは知らず、元ジュディマリのYUKIが歌ってるもんだとばっかり思ってた(佐久間さんとカナダ人の女の人と組んでたユニットのやつ?)。
・詞の内容がアルバムのイメージにマッチしていると思う。
・2人が上下のオクターブに分かれて歌うアレンジは効果的。

◇ 結論
・この1曲があるおかげで、英語盤を手放すことができない。



 英語盤未収録曲

<100まで数えて>

◇ 個人的な感想

・同性愛とは関係ない、普通の失恋ソング。
・中〜低音域で2人がしっとりとハモっているのは新鮮。t.A.T.u.を英語盤でしか知らない人にとっては、彼女たちの新たな魅力が聞ける。
・昔の歌謡曲っぽい叙情的なメロディが、英語圏では受けないと判断されたのかも?

<私はあなたの敵>

◇ 個人的な感想

・これも昔の歌謡曲っぽい叙情的なメロディラインを持つ失恋ソング。吐息まじりの歌い方が雰囲気を出している。
・アレンジはスカスカと思えるくらいシンプル。もし英語盤に採用されていたら、効果的なアレンジが施されたと思う。

<ロボット>

◇ 個人的な感想

・歌詞も歌い方もアレンジも、とにかく可愛い。
・先の2曲と違って、サウンド的には英語盤に入ってもおかしくない曲だと思うけど、ロボットに愛情を抱くという、可愛らしい曲調を歌う女の子っていうのは、きっと英語盤スタッフが考えるt.A.T.u.のイメージじゃなかったんだろう。

◇ 3曲まとめての結論

・3曲を眺めていると、「All The Things She Said」で強烈に叩き込まれたt.A.T.u.のイメージ(同性愛やスキャンダルといったアブない雰囲気)が拡散してしまうような曲は、意図的に外されているように思える。だから逆にこの3曲を知らないということは、大袈裟に言えばt.A.T.u.というグループを、(英語盤スタッフの戦略に添った)ある一面からしか見ていないということになるような気がする。



t.A.T.u. ロシア語盤推奨委員会 (http://tatu.moo21.com)